熱帯夜

女として女に愛され愛したい

オタクであると実感することは、安らぎであり強さだと思った日

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仕事上、重要なポジションが回ってきた。いつの間にか周りを見渡せば、年齢的にも経験的にも自分より下の子たちが増えてきて、新人とか若いとかでは済まされなくなってくる年代になった。

立場とか役割とか、面倒くさい全てのことが回ってきてしまう中堅と呼ばれるお年頃。だって私には、主人もいないし、子どももいない。その事実で選ばれた部分もあるような気がして、こういうとき、自分がちょうどいい使い捨ての駒にされているかのような気分になる。

クソ真面目なフリをして、関係者に挨拶をする。大変な役が回ってきたことを労うようにして応援してくれる人、自分のことのように慌ててくれる人、お菓子をくれる人、お世話になります、と頭を垂れる人、何も言わない人、少し悔しそうに見える人、色々な人に色々な対応をしながら、気疲れを慣れないスーツに纏ったまま愛車に乗り込む。

その自分だけの空間に戻ってきた瞬間の感覚についてお話ししたい。 

youtu.be

 『Trigger』を大音量で流して走り出す。逃げ出すつもりでアクセルを踏む。一刻も早くここから去らないと、私が私でなくなってしまいそうだから。

フロントには、ツイステのぬいぐるみが数体。右側にはポムフィオーレ寮、左側にはハーツラビュル寮。助手席には、いつからあるのか分からない、ヤドンのフィギュア。ミラー横には、ルナとアルテミスが仲良く並んでぶら下がっている。

多分いまTwitterを開くことができたら、BLが好きだ〜〜〜!と何回でも叫べるし、創作について考えたり呟いたりできる。新しいゲームの情報が流れているから、面白そうなものを調べてみることができるし、好きなゲームのイベントがいつから始まるのかも簡単に知ることができる。

――ああ、こっちが私の現実だ。

と確信する瞬間が私を生かしているのだと思う。周りの大人がなんと言おうと、私は私に帰ってこれた、と思う。オタクに戻ることは、本来の姿を取り戻すような安心感がある。

俗に言うオンラインに楽しみを見出して、居場所を手に入れたからか、オタクの自分にとってオフラインというのは、とても生きづらい場所だ。

「本当は順番的に私だったのに……ごめんね(―家庭と子育てがあることで、独身で身軽なあなたに押し付けることになってしまって―そんな思いが伝わってきたからか)」

こんな風に仕事仲間に謝られたとき、怯んだのは仕方がないけれど、

「うちには犬しかいないですから」

どうして子どもを蔑むような言葉を使ってしまったのだろう。私には、妻がいるし、子どもがいる。笑ってそんなことを言う自分に吐き気がした。

こういう積み重ねがとてもしんどくて、最近、感情を爆発させてしまった日があった。

眠たげな妻にしがみついて「仕事が辛いよ」と、大きな声で赤ちゃんみたいに泣き喚いてしまった。頭を撫でてくれながら、何か温かい言葉をずっとかけてくれていたように思う。

周りが言う現実と、自分が生きる現実は違う、と線を引くためのシェルターが、オタクであると実感することで出現するのかもしれない。今日は帰ったらAPEXをやろう。今日も、明日も、リアルのあの人たちとは違う世界で過ごそう。

それで少しだけ強さを蓄えたら、またシェルターの外で戦おう。家族のために。自分のために。