熱帯夜

女として女に愛され愛したい

差別社会を作ってきた人たちへ

疲れた。多数派の人ばかりの世の中に適応して生きるの。

その中の誰かの結婚報告でしか、連絡をとることがなくなった人たち。かつて私の「友人」だった人たち。彼らはまだ、私のことを「友人」だと思ってくれているらしい。こんな不平等な関係、私にはもう要らないのだけれど。

そのドレスも、その写真も、できれば全部、燃やしてしまいたい。真っ黒焦げにして、私の目に映らないようにしてしまいたいの。どういう気持ちで「結婚式に出たくない」という本音を話したのか分からないようだし、分かろうともしないみたいだから、だから同じ世界線で生きていくことはやめたの。形だけの「友人」なんて作るべきじゃなかった。違う世界に生きるあなたたちの言う幸せを、私は理解できないから、お祝いすることができない。ごめんね、憎いの。

私たちは今、国から「差別されてもいい存在だ」と言われていて、あなたたちの呑気な結婚報告に付き合っている余裕はないの。別々の世界で生きましょう。

――なんて、そんなことが言えるはずもなく、私は今日も「結婚おめでとう!幸せになってね」と打ち続ける。カメラで繋ぐことがあれば、そう言い続ける。彼らとは違う世界線に生きている、別の世界の人だと思っているのは私だけで、実際には同じ世界に生きていなければいけないのだから吐き気がする。

レズビアンやゲイが集まる場所でしか、本当の生きやすさを知らない。私のことを異性愛者だと決めつけてくる人はいないし、女性の私が、女性のパートナーに甘えていても、誰も不思議に思わない。あの空間は最高だ。

どこでだって恋人やパートナーに甘えられる環境がある異性愛者にしか優しくない日本。手を繋ぐのも、寄り添うのも、街中で辺りを見回さなくても、急にそういうことを好きな人に対して出来るってことが、どれだけ恵まれていて、それだけでもどれだけストレスが少ないか。

結婚することで、二人で歩む人生にどんなメリットがあるのか知っている人は、日本にどれぐらいいるんだろう。婚姻届という紙きれ一枚で結ぶことができる法的な契約に勝手に付随する、税に関する優遇、法的な立場に関する優遇、社会的な信頼に関する優遇、そこまで考えて結婚する人たちってどれぐらいいるんだろう。

好きになる相手が同性だから、そんな理由だけで、日本で二人で生きていくための普通の結婚生活を手にいれることが叶わない。「叶わなくて当然、俺ら私らと違うということは、おかしいんだから」と国に言われているんだよ。

生きている世界が違うんだ。結婚したっていう報告がしんどいのよ。気付いたら社会からずっと置いてけぼりなのよ。自分には関係ないって無意識にでも思わないでよ。どうか「こんなのおかしいよね」って一緒に声をあげてよ。本当は大事なあんたたちの幸せを心から祝いたいよ。大好きだよ。ねえ、対等な立場で結婚生活について楽しく話したいよ。「まだ結婚できないんだ?日本て遅れてるよね」っていう遠くからの慰めの言葉では、惨めになるだけなんだよ。私たちには一刻も早く、法的な婚姻が必要なんだよ。

今回のデモで私が救われたことは、同じ気持ちでいた仲間、同じように傷ついた仲間がいたことが可視化されているということ。ひとりぼっちじゃなかったんだと分かったこと。声を上げ続けるべきだと再確認できたこと。やっぱり私はパートナーとふうふ関係になりたい、と心から願っていることに気づけたこと。

もうこれ以上、好きな人たちと距離を取りたくない。同じ世界で生きたい。どうか、どうか、差別がいけないことだと気付いていください。自分が自分と違う人たちを差別してしまったことを素直に認めて、謝罪してください。国会議員として、全ての人が住みやすい国を作るために、本当はどうしたらいいのかを、よく考えてください。