熱帯夜

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レズビアンの私が保険金の受取人を同性パートナーに指定して生命保険に入った話

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こんにちは。mira(@mirara_l)です。今日はレズビアンである私が、先日ようやく生命保険に加入した話を書きます。

 

はじめに

 

新元号『令和』のいま、まだまだ会社は限られていますが、同性パートナーを保険金の受取人に指定することができます。

 

最初にその画期的な取り組みをしたのが、ネット型保険のライフネット生命だったと記憶しています。続くようにして平成の終わりには各会社も追いつけ追い越せと同じように規定を変更していったのでした。ライフネット生命もそうですが、今までの事実婚の範囲を広げる、というやり方ですね。法律での話ではなく、会社単位で事実婚を同性カップルにも広げる対応を取ります、という規定変更は、保険を必要とする同性愛者に寄り添ったものでありがたいです。

いまや生命保険だけでなく、家のローンも同性で一緒に組めるようになったり、車の保険も一緒に入れるようになったり、私たちが飼っている愛犬の保険会社も配偶者に同性パートナーを含める、という改善をしてくれました。確実に時代は変わってきています。

 

 

だけどそれらは、やはり会社ごとの取り組みでしかなくて国の法律的には赤の他人なので、現実には不都合がまだまだたくさんあります。今日ここに記録していく生命保険の受取人の話で言えば、

 

 

  • 年末調整や確定申告での生命保険料の控除は、受取人が二親等内親族に限るので、同性パートナーが受取人になっている場合は控除申告の対象外であること 
  • 死亡したときの保険金を受け取る際、二親等内ではないので保険金の全額が相続税の計算に入れられ、金額によっては残されたパートナーに相続税がかかる可能性があること

 

などです。それと今回、生命保険に加入をしてから初めての年末調整があったので書き方の面で不安な点もありました。その辺りをゆっくりと掘り下げて書いていきたいと思います。

 

この保険会社を選んだ理由


私たち女性同士カップルは出会って12年目に突入、同じ家に帰るようになって早2年。 お互いに新しい地で仕事も安定してきて、生活もなんとか回るようになってきました。

 

しかし、貯金がまだ十分に無いいま、もし私に何かが起こった時にパートナーに残されるものは何もありません。逆であってもまた然り。何故って、私たちの関係は法的に認められた配偶者同士ではないから。それだけ。友達と遊びで一緒に暮らしているわけじゃない!人生かけてるんだ!同性同士でも法的に結婚できる世の中だったら、こんなにも生きづらい思いをしなくてもいいのに!と、思わず声を荒げたくなります。

 

いま住んでいるこの賃貸だってどうなるんだろう。契約者は私。いくら仲介業者が私たちの関係を知っていたって、急に何かが起きてしまったとき、私のパートナーは色々な準備ができるまで住む家を保証されるんだろうか。愛する人に少しでも安心を残したい、そんな思いで保険の契約に至りました。

契約する会社は、ほぼ最初から決まっていました。やはり最初に生命保険の受取人の範囲を同性パートナーまで広げてくれた会社がいい。それに、以前CEOの出口治明さんが書かれた本を読む機会があり、そのお人柄と知識に惹かれたから、という理由もあります。会社の代表、かつアライとしての発言も多く、好感を持っていました。

 

働く君に伝えたい「お金」の教養

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検討から申込にかけてですが、ほぼネットで完結するのが想像以上にラクだった。いまCMで保険の窓口とか保険見直し本舗とかあるじゃないですか。そういう人 対 人で相談できる場所もあるし、実際に直接聞きたいことも色々あったけど、あぁいうところは怖すぎて無理ですね。カミングアウトをしていないクローゼットの同性愛者の私には、ハードルが高過ぎた。

 

だから商品を検討している間にも、このページを何回だって見て、ここで決める!という決意が揺らがないようにしたの。途中できちんとパートナーとも話し合いながら*1、私は生命保険と医療保険、それに就業不能保険の3種類に加入することにしました。


私の加入した保険会社の場合、パートナーシップ制度の証明や公正証書等を用意しなくてもいいのも決め手になりました。

 

  • 同居の事実を確認するための住民票
  • 所定のパートナー関係を確認する書面(保険会社が用意してくれる)

 

の2種類のみで審査をお願いできました。

 

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<ライフネット生命保険株式会社HPより>

 

いま住んでいる場所にパートナーシップ制度なんていう気の利いたシステムは無いですし、公正証書作るお金があるぐらいだったらこんなに慌てて保険には入っていないかもしれません。上記2つのみでOKなのは、かなり安心感がありました。

 

話は逸れますが『パートナー関係を確認する書面』ってのが、なんだか婚姻届みたいで、ちょっと緊張したし、なんなら照れた。保険料を支払うのはこちらなのに婚姻届みたい、なんて喜んでいるのも変な話ですが、それでもやっぱりね、公的な紙面1枚の中に自分たちの名を連ねるというのは普段叶わないからこそ、単純に嬉しかった。

契約にあたってそこからはトントン拍子で進みましたが、あと最後に残った心配が『面談』の2文字でした。

 

保険契約で『面談』ってなに?

 

同性を生命保険の受取人にするから保険金詐欺じゃないかと怪しまれてる?とか、面談って絶対あるの?知らない誰かが調査をしにくるみたいに家にあがるの?怖い人だったり、偏見持ってる人だったりしたらどうしよう……とか色々と考えていました。でもこんなページを作ってくれるこの保険会社を信じたい気持ちもある!でも……と、思考は、でも……いや、でも……。の繰り返しでした。そうこうしているうちに無事に申請が通り、やはり面談をしたいという連絡がやってきたのです。

 

電話口の方は保険会社から委託された会社の人らしく、物腰が柔らかそうな、穏やかなおじさんの声でした。ちょっと怯んだけど「この面談は同性パートナーを指定すると必ずあるものなんですか?」と質問をしてみました。

 

「私は委託されている身ですので詳しくお答えはできないのですが、おそらく必ずあるわけではありませんよ」と、優しく教えてくれました。面談ルーレットに当たったのかなぁ。ネットで検索をしてみるとこの保険会社で契約した同性カップルさんで、やはり面談があったという事例も数件あったので、受取人を相続人以外にしたり、事実婚のパートナーにすると高確率で面談は入るのかなと思います。

 

もしも受取人を同性パートナーにしてこの保険会社に申し込んで、面談はやらなかったよって人がいたら教えてほしいです。うちの場合、まだ私だけしか契約をしていないから、パートナーの保険を申し込むときにも面談があるのかどうかが気掛りです。

 

面談当日

 

ドキドキしていましたが電話口と同じ方が後日、約束の日にやってきて、丁重な姿勢でご挨拶をされました。リビングに上がっていただき、いくつか質問をされましたが、心配していたような不躾な態度や質問は特になく、最初の印象と同じく柔らかな雰囲気のおじさまで安心して面談を受けることができました。

 

年収や職業、なぜこの保険に入ろうと思ったのか、同居をして何年か、などなど。ネットで入力したり、パートナー関係を確認する書面で記入したことを、もう一度確認のために聞かれているような感じでした。

 

もちろんパートナーが隣に座って。少しこそばゆかった。他人相手にふうふとして隣に座ってお話する機会ってほとんど無いから。

保険や面談には何も関係ないけど、滅多にない来客で部屋の掃除がはかどりました(笑)面談をして何が1番良かったかって、お部屋が強制的にきれいになったことかもしれない。。。

 

そんな流れで審査は無事に通り、晴れて契約完了に至ったのでした。やるべきことをやっていけば、同性カップルでも何の問題も障害もなく生命保険の手続きをすることができました。

 

年末調整の控除申告について

 

記事の最初、生命保険契約をする上で私たち同性愛者にとって不都合なことを2つ書きました。そのうちのひとつですが、会社で年末調整をする際、生命保険控除の欄に書けないんですね。私のこの契約は、税金控除の対象外なんです。なぜかというと、死亡保険金の受取人がいわゆる『相続人』ではないからです。正しくは国が私たちの関係は相続人にあたらないと差別をし続けているからなんですが。

 

まぁそれは最初から調べて分かりきっていたし(分かりたくもないけど)、控除申請欄に書かないようにと気を張って年末調整の手続きを待ちました。

 

『生命保険料控除証明書』が手元に届いたときに、あることに気が付いたのです。うわ、『生命保険』と『医療保険』と『就業不能保険』の控除証明が、同じハガキにまとめて記載されている……!?

 

何が問題か?

 

『生命保険』に関しては同性パートナーを受取人に指定しているので控除の対象ではないのですが、『医療保険』と『就業不能保険』に関しては受取人が自分になっています。つまり控除の対象となるわけです。

 

同じハガキに記載されているのに、あえて『医療保険』と『就業不能保険』だけ控除の申告欄に書いたら、気を利かせた事務さんに「この『生命保険』の欄、書き忘れてるよ」と親切で紙を返されてしまうのではないだろうか。どうしよう。

 

私は職場でカミングアウトをしていない。

 

怖い怖い怖い。同性パートナーを受取人にしている生命保険の申告は要らないんだから、強制カミングアウトはしなくていいんだ〜って、こないだ安心したばかりなのに!なんで全部が同じハガキに記載されてるんだよ〜〜〜!(絶句)このハガキは、年末調整の用紙に添付して提出しなければならないので、困った困った。どうしよう。

 

 

はあ。毎年、年末調整に苦しめられてるんだな……と、とりあえず、今回は怖すぎたので、契約したての保険会社のコールセンターに、縋る思いで助けを求めることにしました。

 

コンタクトセンターのオオタさん

 

問い合わせのコンタクトセンターの電話番号がホームページに載っていたので、思い切ってそこに電話をかけることにしました。

 

出てくれたのは、男性のスタッフさん。おそらく私と同じぐらいの年の人で、なんだか身構えてしまいます。名前を告げて、住所、生年月日と、本人確認が終わったらいよいよ相談。きっと向こうに情報は見えているはず。ああ、きっと受取人には女性の名前が書いてあるから女性同性愛者だってバレてんだろうな……と、とにかく不安に駆られていました。

 

でも順序を追って丁寧に話をしていくと、私の困り感に対して電話越しに聞こえる声色だけでも分かるぐらいに心から恐怖に共感してくれて、マニュアルではない、彼なりの返事をくれました。とてもとても嬉しかった。

 

生命保険料を払い続けているのに、税金控除の対象とならないことを一緒になって悲しがってくれたり、生命保険だけ申請欄に書かないことで同性愛者なのかと勘繰られる可能性に怯える私に、親切に気持ちを寄せてくれました。本当に泣きたくなった。電話の向こうの、カウンセラーでも医師でもない、今日初めてお話をした知らない人が、まさかこんなにも自分の気持ちに寄り添ってくれるなんて……。なんて安心できることなんだろう、って。

 

オオタさん、本当にありがとうございました。あなたのおかげで、冷静さを取り戻すことができました。

 

  1. 保険会社の機械の都合上、1枚のハガキに全ての契約の控除証明が載ってしまうこと。
  2. 不記載を指摘された場合、保険会社に問い合わせ済みで、この中の生命保険のみ控除申請の対象外であると言われた、と伝えること。
  3. それでも突っ込んで聞いてきた場合は、受取人の関係です、とだけ答えること。

 

それ以上は通常、勤め先が突っ込んで聞くべきことではないし、それに対して答える筋合いもない、と背中を押してくれました。この出来事は、これから先もこの保険会社にお世話になろう、という信頼の決め手になりました。

 

マイル、家族割、ローン、賃貸、保険、結婚式、など、使えると分かっていても問い合わせが必要だったり、スムーズに手続きができないことが、いまの日本にはまだまだたくさんあります。そんなとき、こういうアライな対応をしてくださる、一人ひとりの社員・スタッフの気持ちや、その企業の理念って、私たちが物を選んでいく大切な道標になります。人間やっぱり温かい方に行きたいですよ。安心できる方に行きたい。

 

後日談と残った疑問

 

結局、年末調整の書類を提出してからしばらく経ちますが、まだ事務担当からは何も聞かれていません。書かなかったら書かなかったで済んでいくのでしょうかね。自己責任的な?

2021.11.15 追記→

このあと、人事異動があり、新しくきた事務さんには、しっかりと突っ込まれました。「ここ書いてないよ。申請できるからこのハガキに載っている内容を書いて」と言われましたが、「保険会社にこれは控除の対象外と言われています」の一点張りで通しました。ヒヤヒヤした。毎年このやりとりがあるかと思うと、かなりうんざりしますね。

 

そのあとお家でパートナーと話している中で、もししつこく突っ込まれたら、男女で事実婚してる人でも同じように生命保険の控除を受けられないんだから、それなりの訳あり感を出しとけばいんじゃね?という結論に至りました。た、たしかに……。そもそも、それだけの情報から「この人もしかして同性愛者なのでは……?」と考える人がいるような、進んだ業界でもないか〜……。

 

残った疑問ですが、万が一、控除の対象ではないのにも関わらず、年末調整の用紙に払込額を書いちゃったとしたら、どうなるんだろう?ってこと。どこかで弾かれたり、返却されたりするのかしら。うーん、まだまだ分からないことだらけ。法的に結婚している異性の夫婦は決められた通りに書いていけば終わっちゃう、なんてことない手続きなんだろうな。そして決められた通りに書いていけば、しっかりと生命保険の控除も受けられる。そんな当たり前に思える結婚による優遇が、同じように愛する人と暮らしているのに受けられない人がいるんですよ。案外、隣にいるかもしれませんよ。

 

個人的な記録として書いたので、かなり長文の記事になってしまいましたが、もしもどなたかのお役に立てたり、少しでも共感をしていただけたのなら、幸いです。

*1:「死んだらいや」という返事しか来なくて話し合いにならないときもあったw