熱帯夜

女として女に愛され愛したい

いちばん かわいい こうはい

結婚への異常な執着

 

私は、結婚に対して執着している。恋愛をすると私の考えとして必ず、触れてしまう単語。恋愛結婚をした両親の元に育った。激しい喧嘩はするし、離婚を考えるまでの過去こそあったが。だからこそ、『好き同士は結婚をして結ばれる』という方程式がわたしの中に憧れとして、ある。

いわゆる、女の子の夢?憧れの真っ白なウェディングドレス?そんなものに姉妹の中で1番惹かれてしまっていて今でも執着しているのが、皮肉にもレズビアンだった私、というわけ。いままでも散々、いや、考え出すとキリがないから考えないようにしているのだけれど、当然、友人や親戚の結婚式の招待状が届いたとき、過去に好きだった人の結婚・子育て真っ最中の写真を見てしまったとき、言葉にならない色んな感情に押しつぶされる。

叶いもしない恋をして、性的指向が自分と違う人を好きになるというのは大変労力のいること。できれば、避けたい。でも簡単に自分の感情から逃げられるほど恋愛って単純なものじゃないですよね。仮に私のことを異性愛者の男性が愛してくれたとしても、やっぱり応えることができない。異性が恋愛対象ではないから。

 

あの頃、私が恋をしていた先輩は


それと同じような気持ちで私のカムアウトを聞いていたんだろうな。そして一生、性的指向が違う彼女らとは分かり合えないの。正確には今のパートナーと私も違うけれど、重なる部分は、ある。パートナーとの出会いは奇跡だな。私のことを好きになってくれて、ありがとう。今さらだけど、この奇跡に感謝したい。

好きになった人に、好きになってもらえるということ。その奇跡に感謝するような結婚式がしてみたい。結婚をして、幸せな家庭を築いて、おばあちゃんになったときにもやっぱりパートナーと一緒にいられる毎日に感謝していたい。

今日、目にしてしまったそれは、私の好きだった先輩ではなくて、知らない女の人みたいだった。あの頃とはずいぶん雰囲気も変わり、普通の、イマドキの、アラサー主婦。私が目にしたそれが過去に彼女が望んでいた幸せなら、言うことはない。身の焦げるような恋愛をして、産みたかった年齢で子どもを産んで、子育ての様子をFacebookにあげ、自分の夢に向かって突き進んでいく。周りがその熱意に答えて背中を押してくれるのであろう、あの先輩のキラキラした毎日。

そんな夢を語っていたあなたの隣で、過去にうんうん、と従順に聞いていた後輩は、あなたのそばにはもういないね。後輩の私は自分がレズビアンだと気付いた日から、あなたの色恋話、結婚、出産計画の話を聞くのがしんどかったよ。あなたにカムアウトした後も、私がかつてあなたを好きだったこと、恋愛対象は女性であることなんて聞かなかったことのような態度でそれは続きましたね。

「レズの後輩が私のことを好きだった=なんでも言うことを聞いてくれるだろう」という考えだったのかは知りませんが、仕事の手伝いに呼んだり、所用の足に車を出せとパシられたり。いつも急に呼ばれるせいで私のプライベートな時間は、あの人の前では無いも同然だった。過去に私があなたに恋愛感情を持っていたが故に、自分は私にとって今でも特別なんだとでも思われていたのかしら。


いずれ、私はもしかしたら職場であなたの子どもを預かるようになるかもしれない。そのときに私が今のパートナーと家族になり、幸せに過ごしているのを見てあなたはどう思うか、何も思わないのか知らないけれど。それでもそのときに、なぜあのときあの子の勇気を無視してしまったんだろうと思ってもらえるぐらいに、私なりの幸せを手にしていたい。選択すれば結婚も離婚も妊娠も出産も堕胎もできてしまう異性愛者のあなた達とは違う、私達なりの幸せを。

Facebookで「恋愛対象は男性」なんてことまで公開しているのは、私のカムアウトと関係があるのではないかと勘ぐってしまう。ま、いんだけどね。私も先ほどはっきりと言ったように自分の恋愛対象を公表するのは余計な失恋を回避できますものね。

なんにせよ、あの人が私のカムアウトを真剣に受け取ってくれて、それでもアンタは大事な後輩だよ、と言ってくれたのなら……喜んで結婚式にも出席したのに。