熱帯夜

女として女に愛され愛したい

あなたの隣にいた女、同性愛者なんだってさ

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ただいま。
飲み会から帰ってきました。
mira(@mirara_l)です。

疲れました……。
今日も聞かれる聞かれる。

「miraさんは、いい人いるの?」

年齢も年齢だから、みんなちょっと控えめに聞いてくれます。

「いませんよ」

私は微笑む。この嘘に気づいて、と顔に書きたい気持ちで微笑む。あなたの期待する答えである彼ならいませんが、彼女なら、いますよ。それもついでに顔に書きたいと願いながら、向こうが諦めてくれるように切なそうに首を横に振る。

「じゃあ、募集中?」
「……いやー。そうでもないです」

ほら、ここが1番嫌い。どうしてこの人は恋愛に興味がないんだろう、変な子。損してる。これ以上聞いちゃいけない何かがあるのかな。相手の沈黙の中にそんな気持ちが見え隠れする。私は黙って微笑んで、世間が言う『気持ち悪い同性愛者』にならないように細心の注意を払って相手の意識を自分から遠ざけようと必死になる。

お酒を飲んでいてもどこか冷静な頭が、彼らの話す「結婚のメリットは」という話題を追いかける。その場を盛り上げる若い女の子。自分の過去の恋愛の失敗や、これからの期待について、みんなの意見を拾いながら技と言ってもいい流れで一気に場を華やかにする。

この子と恋愛話ができたら、どんなに楽しいだろう。私は家に帰ると何もできないタイプで、奥さんは結構ヤキモチ妬きなところがあってかわいいこと。結婚は私はしてよかったと思っていること。子どもを持つこと。

仕事の仲間と人生の話をするときに、セクシャリティは必ずついてまわる。セクシャリティを隠したままでは本当の自分でいられなくて、そんなときは決まって居心地が悪そうに壁に貼ってあるメニューを眺めることしかできなくなる。

世間の多くの人たちは、無邪気に恋愛の話ができていいなぁ、と思う。自分の愛する人の話を気軽にできて羨ましい。でも1度羨ましいと思ってしまうと、それはそのうち社会への恨みになり、自分がわがままでどうしようもない女に思えてくるからお酒を飲んで、適当に笑って、早く終わって家に帰る瞬間のことを想像してやり過ごす。

帰りの電車の中はそんなことしか考えられなくて、仄暗くて最低だよ。死にたくなるよ。地方で公務員として働くというのは本当になんというか、そういうこと。私自身がそれ。

でもね、駅のホームをぐったりしながら歩いていった先の明るい改札の向こうに、パートナーと娘🐶の姿を見つけたとき、泣きたくなる気持ちを堪える強さが残っていることに気付くんだよ。ああ、私はここに帰ってくるために、今日もそれらをやり過ごしたんだって。この世の中で同性愛者として過ごすことは、生きるか、死ぬか。

あなたの隣で微笑んでいるその人が同性愛者だということは、こうして社会から隠されているんだよ。私だけではないよ。今までも、こうして生きるか死ぬかを選択してきた、たくさんの人たち。私が隠しているようにまた、私の隣にいるかもしれない同性愛者とも簡単には繋がれない。まったく孤独な世界だよ。