熱帯夜

女として女に愛され愛したい

【読書感想】『雨はコーラがのめない』江國 香織 著

私はこの本に出会って初めて、犬との生活という未知なるものを具体的に知った。それで今は、江國さんにとっての「雨」くんのような存在と一緒にいるから不思議(正確にはすぐそばにはいないけれど)。

この作品は前に一度読んだことがあるので、正確には「再読した」のだけど、犬との生活を知らないで読んだときと、知った上で読んだときとは随分と印象が違う気がする。

例えば、江國さんが雨に「人間語で」話しかける描写がたくさん出てくるのだが、犬を飼う前では到底そんなおかしなことは信じられなかったのに、今では当然のように話しかけている自分に気付くとか。娘(愛犬)と自分が同じ時間を共有していても、全く違うところでお互いがお互い、別個の個体として生きているということが鮮明に分かったりとか。

犬である雨との生活、言語が通じない、今その瞬間を生きる不思議な存在と聴く数々の音楽。江國さんの繊細な視点からその2つについて語られるこのエッセイは、まるで小説を読んでいるかのような錯覚に陥ります。

 

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

雨はコーラがのめない (新潮文庫)