熱帯夜

女として女に愛され愛したい

【読書感想】『光のとこにいてね』 一穂ミチ 著【+最近読んだ本】

こんにちは。mira(@mirara_l)です。

今日は久しぶりに本の感想を書きます。感想を書きたくなる本に出会いました。

サクッと読めるレビューはブクログに記載したので、下記のリンクから該当ページへお飛びください。若干ネタバレがあるので、リンク先でも白字で飛ばしていますが各自でお気をつけくださいね。

booklog.jp

最近、読書欲がすごくて、私にしてはたくさん本を読んでいるのだけれど、手に取る本のほとんどに同性同士の繋がりの話が入っているの。引き寄せるのかしら。それとも、普段は偏見や差別のニュースばかり流れてくる中でも、こういう物語を書く作家さんが増えたということなのかな。

↓ ここから先、ネタバレ含むので未読の方はご注意ください。

 

 

女性同士の複雑な、でもある意味とても真っ直ぐな関係性の物語でした。好きなVlogerさんが紹介していて気になって手を取ったもの。内容については何も予習せず、あらすじさえ読まずに購入しました。

(読了後にあらすじを読んだら、せっかくの物語の良さが半減しているようで、とても薄い感覚で書かれた紹介文だと感じてしまった。だからこれから読む方はあらすじにあまり影響されないで、ご自身の感性で文字を追いかけてほしいと願います)

表紙の写真と、タイトルにとても惹かれたなぁ。光のとこにいてね、って言い回しがとてもいいですよね。読んだ後はさらに大好きな言葉になりました。「光のとこにいてね」。

 

この本に出てくる登場人物がもつ感情をいちいち知ってる、と思った。女性を好きになったり、女性に惹かれたりしたことがない女性は、この物語を読んだあと、どんな気持ちで本を閉じるんだろう。感じ方が全然違うと思うので、気になるなぁ。私が異性同士で惹かれ合う本を読み終わったときに不思議さに落ちるような感覚と似た感じになるんだろうか。

女性が女性に複雑な感情を抱くことが私の中では物心ついたときから自然なことだから、スッと物語の中に入り込むことができました。

一穂ミチさんの作品は初めて読んだのだけれど、私多分、この方の作風と相性がいいんだろうな。言葉の選び方とか文章の構成とか、そういうものが自分の心の深いところに栄養剤みたいにぐんぐん染み込んでいくの。ゆっくりと文章を追いかけて、丁寧に本を読む楽しさを再発見するような読書体験でした。

好きな文章を書く方だったから、他の作品もぜひ読んでみたいな。話によると、BL小説家とのことで、同性の作品をよく書かれる方だそう。しかも、”社会人をしながら同人誌で二次創作の小説を書く中で編集者から声がかかった”という経歴をお持ちの方! そういう面でも最高! 応援したい!

ここのページは読了した方しか読んでない前提で、好き勝手に感じたことをつらつら書いちゃうので、ネタバレNGで引き返すなら、本当に今のうちです!

まず何より一人称の使い分けが面白かった。結珠ちゃんが「私」で、果遠ちゃんが「わたし」。大人になるまでずっとこの一人称で表記されるから、視点がころころ切り替わったとしても、今がどちら目線なのかがすごく分かりやすくてテンポよく読める。

最近、好きな作家さんでも登場人物が多いと疲れてしまうところがあったので、基本的にこの二人の視点からしか書かれていないことが途中ではっきりと分かったとき、安心して読み進めることができました。

男性だと「僕」と「俺」では印象がだいぶ変わっちゃうな〜と感じたけれど、そうか、男性だって同じで「俺」と「おれ」で分けたりすれば分かりやすいか。男性は、たくさんの表記があっていいなぁ。キャラクターの印象に繋がるから、一人称って大事よね。

あ、でも女性でも「あたし」とか「うち」とかもあるか。小説って面白いな〜。日本語って面白いな〜。

チサさんとの思い出が、ずっと果遠ちゃんの中に大切にしまわれているのエモいな。怒るとチサさんみたいな口調になっちゃうのに気付く果遠ちゃん、かわいい。エモい。チサさんパートを読んだときに頭を過ぎる、好きな女性YouTuberさんを知っているんだけれど、これは私の中だけに留めておこうっと。

藤野、結構いい奴? そんな予感を読書の感想でメモに残していたんだけど、見事に伏線回収されて参りました〜って感じ! 果遠ちゃん寄りの考えからすると、もうずっと嫌いになれなくて困ってる。頼りになる、冷静で頭のいい大人。ずーっと。

お話の全部がエモいんだけど、私の中で最強にエモエモのエモだと思っているところは、果遠ちゃんと結珠ちゃんの2回目の別れのシーン。。。エモすぎるだろう。。。「口付けた」だなんて簡単には書かない表現力に脱帽しました。。。そして、二人ともが覚えている大切な言葉を使って「さよなら」をする。。。え、ちょ待って、なんだこれ、天才??? それこそ同人誌を読むときのように、ブクログに感想を打つ手が止まらなかったです。。。

ほんでチサさんとの別れのところも「グワ〜〜〜〜〜〜。;;」ってなった。どうして泣いているであろう人を、あんな風に心にクる書き方で描写できるのですか。すごい。

夫きちゃ〜〜〜レズビアン小説じゃなかった〜〜〜なんだよ百合かよ〜〜〜と叫んでしまいそうになったけれど、最後まで読んでレズビアンとか百合とかの次元じゃなかった二人の関係性に、胸がいっぱいです。

”決して二人だけでこの関係性を築いているわけではない”ことも、この作品を人に紹介したいのに難しくなる現象に拍車をかけている。みんな読んだ感想マジで早く聞かせて〜〜〜。

だって引っ越してきたのも「こんな偶然があってたまるかよ〜!」っていう突拍子もなさに最初はがっかりするのに、全然、それが全然、偶然じゃないんだもん!!! 藤野、お前〜〜〜!!! それなのに二人とも既婚者だし、「ハ!!!?!?」 この辺りは頭が混乱して気持ちがジェットコースターでしたね。。。

結珠ちゃんの職業を聞いておったまげた。まさかの被りであることと、ああ、ここも見事に伏線回収していくのか〜ぬかりない、好き、と……。しかも現在の仕事の状況が……さぁ。これなんという偶然なの? 誰かに紹介されたものだとはいえ、実際にこのタイミングで手に取ったのは必然だったとしか思えないんだが。

「女同士の物語」であるのはもちろんそうなんだけど、広い意味で捉えるならば「家族の物語」でもあるんだよな。娘との、父との、鳥との、姉のような人との、兄弟との、結婚した相手との、そして、母との。もう、どれが家族なんだろうね、分からなくなる。

それにしても結珠ちゃんとしての思考、果遠ちゃんとしての思考がほんとーにリアルで、心から尊敬してしまう。作家というお仕事をしている方は、登場人物としての思考や価値観と、自分自身の思考や価値観を切り分けて書くことができる天才なのかな。それとも、やっぱり多少は背後が透けるもの? そんなこと考えて書いていないのが実際なのかもだけど、純粋に気になるぐらいに、二人がそこに確かに生きていた。

嘘をついて母に会いに行ったことを明かすシーンで、「あなたではだめだった」とはっきり答える結珠ちゃん、かっけえすぎでしょう……。

これ、どんな風に終わりを迎えるんだろうって、残りページ数が減っていく度にスピードがありすぎる展開に怖くなったけど、「なるほど、ああやって」と、これまた想像の上をいく余韻にうっとりしました。

女性同士で結婚ができる、同性でふうふになることが当たり前の選択肢として”ある”社会だったら、この二人は違う形で一緒になっていたのだろうか。

結珠ちゃんと果遠ちゃんの運命的な関係が、美しくてきれいだと、ずっとずっと続いて欲しいと願うような社会じゃなくなりますように。こんな素敵な物語にすらならない社会になりますように。

最近読んだ本の紹介


最近読んで、同性同士のお話が出てきた本を紹介します!ネタバレはできるだけ控えて簡単に。


▼ 『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 町田その子 著

愛は愛。愛でしかないわ、こんなの。この中のあるストーリーを思い出しては、今でもブワッとなる。


▼ 『あなたのことが知りたくて』 チョ・ナムジュ、松田青子、デュナ、西加奈子、ハン・ガン、深緑野分、イ・ラン、小山田浩子、パク・ミンギュ、高山羽根子、パク・ソルメ、星野智幸、斎藤真理子、小山田園子、すんみ 著

理解不能なお話もありましたが、いくつかのストーリーには見事に心を持っていかれちまいました。


▼ 『ほろよい読書』 織守きょうや、坂井希久子、額賀澪、原田ひ香、柚木麻子 著

これに入っている、とあるお話も、生きる時代や社会が違ったら……? と思わざるを得ないものでした。ドキドキしながら読んじゃった。


本の中に自然に同性同士の話があると、「社会から無視されてるわけじゃないんだ」って思えて、日々すり減る傷付いた心が回復していくようです……。

本は、心の栄養。
明日も明後日も、読書します。