こんにちは。mira(@mirara_l)です。今日は、今年の夏に読んだ本の紹介をします。印象に残った3冊を紹介します。
『ひとりでカラカサさしてゆく』江國香織 著
江國香織さんの文章を愛し始めてから、もう何年が経つんだろう。初期の作品から順番に読んでいたので、ハードカバーで、しかも発売されて間もなく読む、というのは、私にとってとても新鮮な出来事でした。江國さんの作品の中からお借りしたこのブログの名前も、そろそろしっくりくるようになってきたなぁ。
この本についてのあらゆるレビューでもよく言われている通り登場人物がとても多いので、相関図を書きながら読み進めました。江國さんも最初にこうして関係性や登場人物の特徴なんかを丁寧に書いて考えてから物語を綴っていくのかしら。
自分ではない誰かの暮らし方や生き方、考え方を、どうしてこんなにも美しく書けるのだろう。私もこの本に出てくる葉月ちゃんのように、江國香織という作家の研究をするために大学院に行きたいぐらい!やっぱりこの人の文章が好きだ。
ついに江國さんの作品の中に「ウイルス」「LINE」「Facebook」「Apple Watch」「Netflix」そんな言葉が出てくるようになったかと思えば、若い女の子に「メイル」という表記をさせたりと、なんとも江國さんらしく、たまらない気持ちになりました。
なんだか今の時代を生きる江國さんに、やっと追いついた感じがしました。今まではちょっと浮世離れしているような書き方の作品が多かったせいか、こういう現実的な単語が当たり前のように出てくるようになり、江國さんも時代の流れに身を任せ始めたのかな……と。今までの作品と比べると、何かが削ぎ落とされたような文章に感じました。健全に諦めることを選んだかのような。江國さんの人生や生き方についての、流れすらも感じるようでした。
内容については、ネタバレをできるだけ避けたいのでここには書きませんが、読み終わった後に私の頭にすぐ浮かんだのは、天国にいる「おじいちゃんに会いたくなった」ということ。
おじいちゃんが死んだとき、心の中でたくさんたくさん話しかけていたことを思い出した。それでも話し足りなくて、おじいちゃんの遺体をずっと見つめながら、最初で最後の手紙を書いたこと。その手紙の中で初めてカミングアウトをしたこと。
今でも見守ってくれているような気がするのは、別れが惜しすぎて散々泣いて、また名前を呼んでって、駄々を捏ねすぎたからかもしれない。私のわがままに、ちゃんと付き合ってくれているような気がする、大好きなおじいちゃん。
私のおじいちゃんは病気で死んでしまったけれど、葉月ちゃんのおじいちゃんが選んだのは自死でした。理由がなんであれ、おじいちゃんが選んだことだから正しいと感じることができるのは、きっと孫だからだね。私も葉月ちゃんと一緒で、おじいちゃんがおじいちゃんじゃない一人の男として、どうやって生活をしていたかが、とっても気になるよ。
でも結局、私にとっては私だけが知っているおじいちゃんが全てであって、そのおじいちゃんが大好きだから、どうかそのままで。
『いろいろ』上白石 萌音 著
本屋さんでジャケ買いした本。
なんかね、とってもかわいいエッセイだった。最初は、俳優 上白石萌音さんという人物に対して「テレビの中で見る人」というイメージしか持っていなかったので、いい意味で「同じ人間なんだよな〜」っていう好感を持てて、友達の日記を読んでいるみたいに彼女のことをよく知ることができた。
読書好きというところも、私が好感をもった理由の一つ。さっき書いたけれど、本で顔を隠しながら笑っている表紙を見てすぐに「あ、この人、本のこと絶対好きそうだ。よし買おう」ってなって。本好きとしては、装丁がめちゃくちゃ丁寧で、うっとりしてしまった。単純に装丁ひとつで買いたくなってしまうのよ。
彼女が書いた文章の中に「本との出会いは、人との出会いに似ている」という一文があって、私が常々考えていたことと丸々同じだったから、さらに親近感が湧いて。実際、私のブクログの本棚の紹介のところには、ずっと前からその文言を書いていたんですよね。同じことを考えている人に出会えたのが嬉しい〜。
こんなかわいらしい子がそばにいた、親御さんやおじいちゃんおばあちゃんはきっと幸せなんだろうなぁと、勝手に上白石家の優しい愛情に想いを馳せてしまう。素朴で真っ直ぐで意志の強い、本好きの女性。その子は職業が俳優さんだという、そんな一人の人の人生を、こっそりと覗き見させてもらったような温かい気持ちになって本を閉じました。
『あの時も「こうあるべき」がしんどかった〜ジェンダー・家族・恋愛〜』パレットーク 著
いつもこういう本を読むたびに、当事者ではないマジョリティ側にいる人は、読んだ後にどんな感想をもつんだろう……と、気になってしまう。当事者の私は、いつだってこういう優しく寄り添ってくれるような本に助けられ、生かされています。
ほとんど漫画なので、誰にでも読みやすいと思う。とはいっても、肝心の本の内容は、濃すぎるぐらいに濃いです。分かりやすくシンプルなことなのに、誰もが知っておくべきことが次から次へと。こんな風に大事なことをちゃんと伝えられる才能がうらやましくなっちゃう。素晴らしい本だった。
「こうあるべき」に違和感を抱いてきた全ての人に当てはまるので、誰が読んでもどこかの文章は自分ごとのように捉えられるに違いないです。
個人的に、最後のお母さんとお父さんの会話のやり取りのところで涙腺が崩壊してしまいました。もうすっかり大人になったのに、わんわん泣いてしまった。こんな風に、私もちょっとでも救われたいな。こういう会話をしているふうふがこの世にどのぐらいいるんだろう。私の両親は、私に関する会話をこんな風にしたのかな。それともこれからするんだろうか。
時代によって常識は変わる。変わり続ける。自分がこの先、時代についていけなくなりそうなときにも「知ること」を忘れないでいたいと思わせてくれる本だった。
以上!特に印象に残った3冊の紹介でした。
この夏は、仕事関係の本とか、漫画とか、ここには書いていないものもたくさん読んで、十分に読書の時間をとることができ大満足でした。秋の夜長を楽しみに、今後もたくさん本を読んでいきたいと思います。本は、いい。