熱帯夜

女として女に愛され愛したい

ゆびのわ

わたしの左手の薬指は、あなたのもの。あなたの左手の薬指は、わたしのもの。わたしは小さな頃から植え付けられた、結婚の素晴らしさに囚われている。


普段は子どもに「結婚してるの?」と聞かれることすら怖くて、常に職場ではhoneyから貰った指輪を右手の薬指に嵌めている。それでもあの子達は、大人の女性の指に指輪があるということだけで結婚をしている証だ、と尋ねてくる。きっとわたしも昔、そうだったに違いない。こうして尋ねてくるけれど、この中にもきっと将来、レズビアン、バイ、ゲイ、色んなセクシャリティに気が付く子がいるんだろうな。そんな風に思いながら親切にも「結婚してる人は、こっち(左手の薬指)だよ」なんて笑って教え、途端に寂しい気持ちになる。だってわたしがそう説明している間にも、もうそんなことはどうでもいいといった様子で運動場へ駆けていくんだもの。

今日、湯船に浸かっているときに、右手の薬指にあった指輪をそっと左手に移し替えてみた。それは恐ろしくわたしの指に馴染み、バランスがよく、静かにわたしを守るみたいに光っていた。モノに固執するのなんてすごく幼稚だとは思うけど、指輪ってモノがわたしにとって本当に特別で憧れの存在なんだと思う。小さな頃、ママの指を見ると、パパから貰った指輪で守られているようで羨ましかった。今、こうして守ってくれる人がいるというのは幸せなことだ。

実はもう一つ、結婚指輪に近いプラチナでできた指輪をいただいた。誕生日に、居酒屋の個室で嵌めてくれた重たい感触のソレ。わたしを繋いでおく、気持ちの面では首輪にも近いプラチナは、傷付くのが怖くて、特別な日にしか付けていない。honeyは毎日つけてこそ意味があると言う。大好きなhoneyから貰ったあなたの恋人であるという証。

いつか子どもたちに自慢するんだ。



「結婚してるの?」
「うん、素敵なお嫁さんがいるんだよ」

 

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